オンライン決済サービスPayPal(ペイパル)の創業者であるピーター・ティール。
その落ち着いた語り口とは裏腹に、シリコンバレーでは大きな影響力を持っています。
そんな彼が考える「起業するために大切なこと」とは一体何なのでしょうか。
また、ピーター自身が考える、テクノロジーのあり方と未来はどのようなものなのでしょうか。
全てのことに真摯にひたむきに語る、彼の考える未来を一緒に見ていきましょう。
起業するにあたって1番大切なこと
起業家界隈で天才と呼ばれるピーター・ティール。
彼が考える「起業に最も大切なこと」が何なのか、以下のように語っています。
起業する際に1番真剣に考えなければならないことは、世界中の誰にも思いつかないような唯一無二のことを上手くやれるかどうかということです。
科学技術は世界のビジネスの根本になっています。
科学技術を活かして仕事をしている企業が世界的に成功しているというのは顕著です。
そして、これから起業しようという人も同じことを考えていることでしょう。
「まだ誰も理解していないことができるか」
「まだ誰も始めていないビジネスを始めようとしているか」
これを常に考えて起業することが大切です。
この考え方は、アントレカレッジでも推奨する「ポジショニング戦略」に通じています。
ポジショニングとは、同業他社と異なる強みをアピールすることで顧客を獲得することです。
ピーター・ティールのように「誰もがやっていない起業アイデアで事業を起こす」ことは難しくとも、他社とは異なる視点で価値を提供することはできるはずです。
レッドオーシャンの「英語学習」市場でポジショニング
英会話教室・英会話学習サービス市場は多くの大手企業が参入しており、簡単には市場のシェアを獲得することはできません。
しかし、上記のカオスマップを大手だけに絞ると、以下のようになります。
このマトリクスを見ると、高価格・初心者向けの市場が空いていることが分かります。
そこでアントレカレッジ講師の中村司は、この市場に特化した英語学習サービスを確立させました。
このように、カオスマップとマトリクスで市場を俯瞰することで効果的なポジショニングを行うことができます。
テクノロジーの進歩に満足してはいけない
よく「現代は最もテクノロジーの進化が早い時代だ」と言われていますが、ピーター・ティールは違う見解を示しています。
人類は今、テクノロジーのすさまじい加速の最中にいると言われていますが、私はそうは思っていません。
ここ40年は一番緩やかな成長期と言っても良いと思います。
世界的にコンピューターの発展や経済成長はありましたが、物質的にはあまり成長していないのです。
例えば、輸送や運輸の技術、エネルギー、バイオテクノロジーなど多くの分野において、この40年間での発展や成長があまり見られていないのです。
我々は、なぜ科学技術の進歩がこんなにも失速しているのかを真剣に考えなければなりません。
そして、必ず改善策は存在すると考えながら、常に打開策を探し続けなければならないのです。
楽観的な考え方を辞めて、多少悲観的にならねばなりましょう。
そして、ひとりよがりになったり、誰にも頼らずにやったりしてはいけません。
他者と手を取り、テクノロジーの進化を加速させるのです。
IT業界を牽引する起業家の1人が「テクノロジーの進化を常に考えよう」と呼びかけていることに注目しましょう。
成功する起業家の共通点として「常に改善点を探している」ということが挙げられます。
アントレカレッジでも常に「経営者の成長が止まれば企業の成長も止まる」と伝えており、現状に満足せず学び続ける姿勢が重要だと考えています。
成功体験が企業を滅ぼす
以前、【【コダック】大企業をも滅ぼすジレンマとは?(中村司)】という記事でカメラメーカーのコダックが倒産に追い込まれた理由を解説しました。
概要を以下にまとめます。
20世紀後半においてアメリカ国内だけで言えばフィルム市場の9割以上を、そしてカメラ市場の8割以上を占めたコダック。
一時は売上が100億ドルにも達したコダックでしたが、2012年に倒産してしまいました。
その理由はコダックが過去の成功にしがみついてしまったことでした。
コダックが過去の成功に売上の多くを依存していた中で、市場には競合他者が参入し、結果として収益が得られなくなり、倒産に至ったのです。
これはPayPalのようなIT業界でもカメラ市場でも、どんな市場でも起こりうる現象です。
常に市場の状況は変わるのに「過去にこの方法でうまくいったから」と、1つの行動にこだわっていては競合他社に抜かされてしまうばかりです。
革新に必要な3つの要素
最後にピーター・ティールは「革新に必要な3つの要素」について言及しました。
革新は3つの異なることに影響起因すると考えています。
「素晴らしい打開案」、「さらなる発展」、そして「平等性」です。
今の所、私たちの業界において「さらなる発展」に関しては上出来ですが、他の2つの点に関しては改善が必要です。
例えばバイオテクノロジーを次のレベルに発展させるような「素晴らしい打開案」が求められています。
大学には学術的に「さらなる発展」をした場合には、それを奨励する仕組みがあります。
しかし、10年以上も偉大な科学プロジェクトに献身した素晴らしい科学者個人には、終身雇用や、時には博士号すら与えられないこともあるのです。
これでは素晴らしい科学者が研究を続けられる土壌は出来上がりません。
また、「平等性」を必要としているものはたくさんあります。
例えば、アメリカで新時代の原子力技術を開発しようとした時、核廃棄物の処理方法や、どこに施設を建設するのかについて考えなければなりません。
そういった複雑な事象を、他のエネルギーシステムも含めて、平等に考慮せねばならないのです。
現代では「平等性」が全く機能していません。
ですので、もっと平等であることの価値を真剣に考えるべきです。
特に素晴らしい技術や考え方を持った、科学者や技術者を奨励し、彼らがより良い世界を、現実のものとしようとする夢を、持続的にバックアップせねばなりません。
ここでピーター・ティールが言う「平等性」は、公益性という言葉に置き換えてもいいでしょう。
どれだけ生活が便利になる商品であっても、公害を発生させたり、自然破壊に繋がったりするようなものは「公益性がある」とは言えません。
近年は「サステナビリティ(持続可能性)」が企業にとって必要不可欠なキーワードになっているように、環境意識が企業責任として課されています。
起業は「四方よし」でうまくいく
ピーター・ティールの「平等性」は、アントレカレッジで推奨する「四方よし」の考えにも通じています。
これは、売り手・買い手・世の中・神様が見て、全員が「よし」と言えるような事業のあり方です。
売り手(起業家)だけが得をする事業も、買い手だけが得をする事業も長続きはしません。
また2者が納得していても世間が見て疑問を持つようでは、やはり世間の風当たりが厳しくなるでしょう。
神様が見ても認めてくれるほどの公益性や社会にとっての価値がある事業であれば、周囲に応援されて長く続く企業へと成長することができます。
起業アイデアを考える際には、ぜひこのスタンスを忘れないでください。
まとめ
今回はPayPalの創業者ピーター・ティールの言葉を引用しながら、起業家にとって大切な考え方を解説しました。
言葉の節々から、自分の会社だけではなく社会的な意義を考えた真摯な姿勢がうかがえましたね。
彼が起業を成功させたのは、常に社会のことを考え続けた結果のようにも思えます。
このようなスタンスを忘れず、「四方よし」の起業を意識していただければ幸いです。