小倉広氏『コーチングよりも大切なカウンセリングの技術』答えのない時代に重要なことは?

『もしアドラーが上司だったら』『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』など、数多くの人気作の著者として名高い小倉広氏。

2021年8月21日に『コーチングよりも大切な カウンセリングの技術』が発売し、「答えのないVUCAな時代にカウンセリングの技術こそが求められる」と著作の中で伝えています。

今回の記事では、そんな小倉広氏に「答えのない時代に重要なことは?」をテーマにインタビューをしました。

ゴールが動く時代で大事なこと

ゴールが動く時代で大事なこと

小澤:新しい著作に「先行きが読めないVUCAな時代」と書かれたかと思います。

改めてコーチングも大事だけど、カウンセリングが大事だとおっしゃった理由、バックグラウンドを教えて頂けますでしょうか。

小倉:これまでの時代は「俺も答えは分からない」って、経営者が口にすることは勇気がいることだったと思うんですよ。

今までは、経営者は答えを知っていなきゃいけない。しかし、最近は経営者が勇気を持って、「社長の俺にも分からない」、「事業部長の俺にも先が読めない」って言える時代になりました。

そうなると、試行錯誤しかないんですよね。それの1つがデザイン思考、もしくはアージャイル。昔の古い言葉でいうPDCAを早く回すっていうもの。例えば、今まで年1回、回してたのを、年20回、回す、と。

これからどんどん失敗していこうぜと。そういう時代になったら、失敗前提だからとにかく修正するしかありません。

失敗を隠さずみんなで勇気を持って失敗を共有して、どんどん失敗していくしかない、やりたいことをやっていくしかないんです。答えがないわけだから、マストから始めるんじゃなくて、ウォントから始めることが大事なんです。

小澤:なるほど。

小倉:そのためにはこれまでの合理的判断、正解のある時代の合理性による判断、ロジックの時代、戦略の時代じゃなくて価値の時代、バリューの時代に対応していく必要があります。

1人1人がやりたいことをやってぶつけ合っていく中で、何かが生まれます。そうなると、本音をぶつけ合うしかないし、失敗を許し合うしかないんです。

今まで言えなかったことが、言えるようにならないとアイディアも出せないし判断もできない世界。そういう意味では、これほどまでに環境が変わったのだから、コミュニケーションも大きく変わらなければならない。

そのコミュニケーションが「分かり合い、共有し合う」という、今までやったことないコミュニケーションで。

それが、正解へ向けて人を動かす目標達成型のコーチングではなく、互いに自分の内面にアクセスし、それを伝え合い理解しあうカウンセリングに合ったっていうのが私の主張です。

小澤:なるほど。やっぱりコーチングっていうと「これだ」というゴールを見せる印象がありますが、VUCAな時代においてそもそもゴールが見つからないですからね。

小倉:そうです。コーチングの世界は「手段は議論するけど、ゴールは決まっている、既に決めている」という前提がありますが、今はゴール自体を動かしていく時代ですから。

小澤:そうですね。価値観も変わっていきますし、どこに向かっていけばいいのか分からないっていうのは確かにおっしゃる通りですね。

小倉:商品開発や経営自体がまさにそうです。「やってみたら全然違った」とかたくさんあるじゃないですか。

カウンセリングの世界ではナラティブセラピーとかフォーカシングっていうカウンセリング技法がありますが、認識や考えがあってそれを言葉で表現するんじゃなくて、表現した時に認識と考えが生まれ、それと同時にお互いにとっての事実や世界が変わっていくんです。

要は言葉にして初めて「俺が言いたいのってこういうのだ」とか「ちょっと違うな」とか、表現しながらやりたいことが変わっていく、どんどん動いていく。

そして、相手の言葉を聞きながら「あー、そういう考えがあるならば、自分も同じかもしれない」と自分の世界認識、事実もどんどんと変わっていく。

さらに言えば表現だけじゃなくて、実際にやってみることです。

頭に描いてみたのが正解だと思っていても、「やってみたらどうも面白くない」とか、「なんかこれ違う、俺がやりたかったのと違う」っていうのがいっぱいあるはずです。

小澤:確かにありますね。

小倉:そういう言葉に出してみる、もしくは身体でやってみるっていうのが、カウンセリングなんですよね。

だから、考えを複写してコピーして、言葉にしているんじゃなくて、言葉にして考えが生まれるっていうのがカウンセリングの心理学的な発想で、コーチングとは順番が逆転しているわけです。

思考があって答えがあって、それを表現としてプリントアウトするのが、言葉。こう考えられていたわけですけれど、思考はどんどん上書き更新されていきますよね。今そうだけど、喋りながら思考がどんどん変わっていっていますから。

外的環境の変化がVUCAな時代を加速させる

外的環境の変化がVUCAな時代を加速させる

小澤:これまでは正解があった時代でしたが、現在はVUCAな時代。正解が見えない時代に移っていったとおっしゃったと思います。具体的に何故そのような正解のない時代に変わっていったんでしょうか?

小倉:外的環境の変化ですね。例えばテクノロジーや文化、価値観や法律的変化。それこそ経済だったら為替や金融の変化とか。日々全てが音を立てて変わっていってて、特にインターネットがそれを加速させたわけです。

これらの外的環境がものすごいスピードで動いて、掛け算で加速度的に変わってきているから、その組織の中のコミュニケーションは外的環境に適応しなくてはいけません。

だから、組織はオープンコミュニケーションを取り入れないといけません。外と隔絶されて外が変化しているのに中が旧態依然としてたら終わりです。

組織は退化していくわけで、常にオープンに、外の変化に否応なしに対応しなきゃならない。そういう理論だと思います。

小澤:PDCA回しながら、どんどん変化していかないといけない中で、これから起業していく人も対応していかなきゃいけないところだと思っています。

例えば「今この事業がトレンドだからここに参入しよう」と決めたとしても、その市場は既に成熟期に入って、市場の成長は見込めないなんてこともありますよね。

そういった時に、その市場にそのままいるのか、別の市場へ切り替えるのか。この辺りのフットワークの軽さが今の変化が早い時代には必要です。

カウンセリング型コミュニケーションの導入

カウンセリング型コミュニケーションの導入

小澤:経営者の方でも、やっぱり社員とのコミュニケーションに悩んでいるとか、もしくはコミュニケーション術自体を学びにいくっていう方が増えているのかなって印象がありました。

その中で、まずカウンセリングの技術を導入しようとなった場合、どういうところから始めたらいいんでしょうか?

小倉:1番手っ取り早いのは1on1ミーティングです。

例えば、カウンセラーである私自身も、今週だけで何社かカウンセリングしています。中には何回か友達とセッションをすることもあるんですよね。

これは、本人が合意してくれたから成り立ちますが、本来は、友達とカウンセリングって、すごく難しいことなんですよ。

これは多重関係っていって、友達ととカウンセラーっていう二つの関係を同時に持つことです。友達という薄い関わりだから関係はギリギリ成り立つけれど、例えば上司・部下とかは難しいし、恋愛関係があるともう成り立ちませんね。

要は、複雑ないくつもの関係性って成り立たない。そういう意味でいくと、上司と部下がカウンセリングでコミュニケーションするって実はとても難しいことです。

小澤:では、どうすればよいのでしょうか?

小倉:モードチェンジして切り離すしかないんですよ。日常じゃないところでカットオフして、別の場所を作って、別なモードで別な関係性じゃないとダメなんですね。

だから、忙しい業務で電話がたくさん鳴ったりとか、カタカタとパソコン打ってる中で、カウンセリングコミュニケーションするのは難しいし現実的じゃないんです。

限られた時間と空間の中だけでいつもと違うことを、お互い分かりながら、意図的に違うコミュニケーションをとるっていう場が必要です。だから1on1ミーティングはとてもいいんですね。

小澤:そうなんですね。例えば、どのように1on1ミーティングをすればよいのでしょうか?

小倉:私がさっき言った飲み友達とカウンセリングやる時は、モードを変えないといつものお喋りの延長線で成り立たないんですよ。

どうするのかっていうと、それを1回切るんです。よく使うのはマインドフルネス瞑想ですね。

「今からカウンセリングしましょうか。」
「セッションする前にちょっと頭切り替えよう。」
「瞑想10分くらいしようか。」

ってします。例えば、BGMでチーンってというお寺の音とか滝の音とか聞きながら、目を瞑り10分瞑想する。「呼吸に意識を集中します」って、モードを変えていくのがいいですね。

小澤:確かに著書にも1on1中に他の業務が気になって仕方がないなど、割とそういうところで悩んで、なかなかスムーズにやりとりができていない場面が、描かれていましたよね。会社でやる際には、そういう導入する環境作りは大事なんですね。

小倉:逆に言うと、そのぐらい環境を変えてとことん別のことをやってほしいんですよね。ティーチングを中心とした職場の業務コミュニケーションを普段やっている会社がカウンセリング型コミュニケーションをやると必ず違和感があるんです。

落ち着かなくてなんかソワソワしてモゾモゾして、ちょっと居心地悪い感じ。それをわざとやるんです。

小澤:わざと居心地悪くするんですね。

小倉:1on1ミーティングをやると、よく文句が出てくるんですよ。

「いつもと違って気持ち悪いです」や「居心地悪いです」とかみんな言うんですよ。当たり前ですよ、いつもと同じだったら結果出ないですから。

アインシュタインは「同じことを繰り返し行いながら違う結果を期待することを精神異常と呼ぶ」と言いましたよね。だから、違う結果を得たければ違うことをしなさいってことなんですよね。

小澤:なるほど。確かに、ちょっと上手く導入出来てない場合って、そのまま上司・部下の関係を持ち込んでしまったりとか「最近どうだ?」みたいな感じになってしまいがちなのかなって、今お聞きして思いました。

小倉:いつもの延長上で、上司・部下を持ち込んで、いつもの進捗管理をするんですよ。それはダメで、全く違う違和感のあることをあえてやらなきゃいけません。
だから、1on1ミーティングを初めてやって「自然に出来ました」は、間違いなんですよね。

私はよく「1on1ミーティングのカウンセリング型コミュニケーションはダイアログ」って研修で言うことがあります。

ダイアログって実は人によって定義が違いますよね。私が言ってる定義はカルフォルニアにいるロバート・レズニック博士の定義を使っています。

カンバセーションは世間話みたいなもので他人のことを話す。ダイアログはお互いが自分の内面の話をし合う、特に感情を伴った内面を伝え合うというものです。

日本人は職場で行われている会話の多くはカンバセーションで、ダイアログを唯一やってるのは飲み会なんですよ。

小澤:飲み会ですか?

小倉:飲み会で本音トーク、ぶっちゃけトークって結構ありますよね。

「部長、日頃は言いにくいですけど酒の力借りて言っていいですか?」みたいなのは日本人は得意です。

そして、その飲み会でのぶっちゃけトークがあるお陰で仕事が回っていた側面は否めないんです。それがなくなってしまっては仕事に支障が出る。

でも、今はコロナの時代で、そういう機会も減りましたよね。それに、そもそも飲み会の場ですから、仕事の話するのはおかしな話です。

じゃあそれを職場でやるってなるとモードチェンジするしか、場を変えていくしかないってことです。

小澤:ある意味飲み会っていうのも場が変わって、メンタルの状況が変わるからこそ出来るっていう、それを仕組み的に作っていくのはすごく大事ですね。

小倉:だから飲み会の本音トークを職場で始業時間中にやるのが1on1だと思ってるんです。

通常の進捗ミーティングをやるんだったら1on1じゃないですよ。分かりやすく言うと、酒を飲まずに、飲み会を1on1でやるってイメージなんです。

カウンセリング技術の実践

カウンセリング技術の実践

小澤:小倉さんのご経歴を見させて頂いてると、ご自身のコンサルティング事務所、ベンチャー起業の立ち上げ、色々な起業を行われているとのかなと思うのですが、その中でカウンセリングの技術というのがこういう場面で役に立ったっていうのはありますか?

小倉:まず、私がコンサル会社のオーナー社長を10年やっていた時、前半の5年間が全然上手くいかなくて、それで1on1始めたんです。

当時、1on1ミーティングって言葉が無くて「ティータイム面談」っていうダサい名前をつけてやっていたんですね。

中身は、今の1on1。Yahooがやってるのと一緒で、話す内容は全部部下が決めて上司は話の内容決めない。部下が話しやすいテーマを話すし、自分が聞きたいことはほとんど聞かないというものでした。

今で言うところの「ダイアログ」を当時無意識的にやってたんですよ。経験則で、その逆をやると上手くいかないっていうのが分かったからです。

いつも自分の聞いたことをガーッと質問攻めしてて、私の言葉で言うと「取り調べ面談」ってやつをやると、部下が嫌がるってよく分かったんです。

じゃあ、その逆をやるとどうなるんだろう?って色々実験していって「これは上手くいくな」っていうのが1on1でした。それで、部下との関係性はガラリと変わりましたよ。

小澤:「事前に喋るテーマを用意しておいてね」みたいに声をかけておいて1on1をやるという形だったのですか?

小倉:テーマを決めるパターンと決めないパターンの2通りあるんですね。Googleさんは「事前に用意しておいてね」って決めるんですよ。その逆にYahooさんはあまり決めないんですよね。

私はどちらかというとテーマは決めない派です。何故決めないかというと事前に用意すると、進捗管理になりがちだからです。予定調和的な堅苦しい話に終始してしまって、どうしても上司の喜びそうな話とか業務的な話を、部下は無意識に上司を忖度して、そうなっちゃうんですね。

小澤:なるほど。

小倉:あまり予定調和にならないように、その場のアドリブでちょっと揺さぶる。「なんでもいいよ」「心の中で浮かんでることを教えて」「もやもやしてることって何かない?」って、その場のアドリブで聞く方が出てきたりするので。

会社によっては、業務寄りにやりたいってところもあると思います。その場合は、用意してもいいかもしれません。ただ、用意すると予定調和とか忖度に走る危険性があるんです。

一方で用意しておく方にも話しやすいというメリットがあります。逆にアドリブ派はちょっと話しにくいとか、慣れてないと部下は何喋っていいか分からないっていうのがある。

小澤:なるほど。その時の状況に使い分けたりするといいんですかね?

小倉:私はお客さんにどちらがいいか聞かれたら「用意しない方がいいですよ」とはお伝えしていますね。これはカウンセリングの根幹に関わるコンセプトみたいなものですから、カウンセラーによっても違うでしょう。

ダイアログが徐々に染み出していく

ダイアログが徐々に染み出していく

小澤:著書を読ませていただき、カウンセリングは本人の中から思いを引き出してあげる技術として、すごく有効だなと感じました。カウンセリングというのは、やっぱり1on1でしか成立しないものなのでしょうか?

小倉:1on1がある程度機能し始めると、日常会話にもじわじわって日中のコミュニケーションが少しずつ変わっていくんです。私は、この状況を「染み出す」と表現しています。

つまり、社内の人間関係が少しずつ深まっていって、カンバセーションじゃなくダイアログが行われるようになっていくということです。

これは、極めて有機的でゆっくりと変化していくんだけれども、最終的には日常的な業務レベルの会話もカウンセリングのようになっていきます。これがカウンセリングのゴールですね。

営業×カウンセリング

小倉:本にもあるけど、上司・部下だけじゃなくて営業でもカウンセリングって使えるんですよ。

営業でお客さんとの信頼関係を作りたいってみんな言いますよね。

そんな時、できるだけ押し売りはせず、カウンセリング的にお互いを分かり合って買って頂くことができればいいでしょう。

実際、私のクライアントの中でも「お客さんのことを分かりたい」、「お客さんから信頼されたい」ってことでカウンセリングを営業に生かしている会社もあるんです。

小澤:そうなんですね。

小倉:あるグローバルメイカーさんでのことです。これまでこの会社は世間話からいきなり商品売ってたんです。

「〇〇さん、今日の野球は巨人が勝ちましたね。ところでうちの製品買ってください」みたいな。これは極端な例ですけど、あまりにもギャップがあって「それはおかしいだろう」と。

小澤:それをカウンセリング的アプローチにすると、どうなるんでしょう?

小倉:「〇〇さんってどんなことが大事なんですか?」「なんで巨人が好きなんですか?」「〇〇さんってどんな事業をやりたいんですか?」「そんなことがあったんですね。それは嬉しいですね」みたいに、少しずつ近づいていきます。

核心に入っていきながら「だったらうちのこういう製品が、もしかしたら〇〇さんのやりたいことに役立てるかもしれない」なんてアプローチですね。

小澤:なるほど。そのような会話なら、日常会話と営業とのギャップが少ないですね。

小倉:そうです。ただ、こういう話をすると必ず質問が出るんですよ。

「小倉先生、よく分かりました。でも、1on1って30分から1時間かけてやりますよね。製品の営業って3分しか時間をもらえない時があるんですよ。3分で済ませてって言われたらカウンセリングはできないですよね?どうしたらいいですか?」

小澤:確かに、緩やかに営業に入っていく場合は切り替えに時間がかかりそうですよね。

小倉:でも、3分で全然できるんですよ。なんなら3分じゃなくて30秒でもできちゃいます。

例えば、クライアントに「あぁ、ごめん。今日アポイント取れへんわ。30秒で。」って言われた時に、普通のセールスマンって「じゃあ、これ買ってください!」「次はいつ時間がもらえますか?」と言っちゃうんですよね。いわゆる物売りです。

でも、私のやってるカウンセリングは感情にフォーカスするから、気持ちを分かり合うところをゴールにするんです。だから、急いで物を売らなくていいし、商品説明なんかしなくてもいい。

小澤:具体的にどうしたらいいんですか?

小倉:例えばクライアントから「ごめんな、今日は商談出来へんわ。1分しかないわ」って言われた時に「いつアポイント取れますか?」なんて言っちゃダメです。

「うわ〜、〇〇さん大変ですね」「身体気をつけてくださいね」って言うべきなんです。これがカウンセリング的アプローチですよ。

小澤:まずは相手の身になって声をかけるというわけですね。

小倉:セールスマンって損得やギブアンドテイク話から入りますよね。だから、こうやって親身に声かけだけしてくれる営業さんは「他と違うな」と思われるわけです。

「他のやつは売り込みに来るけど、この人は俺のこと分かろうとしてくれてるな」って。そこだけで差別化ができちゃうんですよね。

小澤:確かにそうですね。

小倉:そうすると、クライアントのところに来る営業マンが10人いたとしたら、順番が1番上になりますよ。1社2社だけ30分取れるってなったら「あいつの話を聞いてみようか」ってね。

だから、営業のカウンセリング的アプローチは30秒でもできるんです。

つまり、色んなスキルやテクニックは本に書いたけど、真髄は問題解決や提案では無くて、相手を分かろうっていうところがなんですね。

特に相手の思考や論理を分かろうとするのではなく、相手の感情や気持ちを分かろうとするのがカウンセリングの本質です。

「阪神勝ちましたね」はカンバセーションです。「お体気をつけてくださいね。ありがとうございます。」は、心と心でダイアログなんです。ダイアログをしたその瞬間に、それまでの関係がガラッと変わってしまいますよ。

傾聴とはワクワクするもの

傾聴とはワクワクするもの

小澤:小倉さんは『もしアドラーが上司だったら』など、アドラー心理学の著書もたくさん書いていらっしゃいますよね。せっかくなので、アドラーの話もさせて頂きたいなと思っています。

実際にアドラー心理学を経営コンサルティングで生かされた場面はありますか?

小倉:アドラー心理学を1番使いやすいのは、1on1コミュニケーションの技術ですね。

アドラー心理学の技法で代表的なのが「勇気づけ」です。 そもそも勇気づけって、「ありがとう」とか「おかげさまで」とか、3秒あればどこでもできますよね。

それをもし体形的にやりたければ1on1が1番使いやすいんです。

なのでアドラー心理学をお伝えするのはコンサルよりも企業研修が多いですね。そういった場で勇気づけのトレーニングを上司、管理職にやってもらうんです。

心理学をそのまま制度として会社に入れていくっていうのはなかなか難しくて、コミュニケーションの技術や技法としてインストールしていくっていうのが良いのかなと思っています。

小澤:勇気づけをすることで相手が自己有用感を持ち、行動を変えていく。これは、組織のコミュニケーションとしても推奨されるべきですよね。

小倉:そこで1番手っ取り早いのは、研修なんです。ロールプレイをやる企業も最近は増えていますし、勇気づけも力を入れていきたいなって思ってます。

ただ、ちょっと問題があります。企業研修とかでロールプレイをやると、みんな無理して演技しちゃうことが多いんですよ。

小澤:なるほど。そういった文化がそもそもないからでしょうか?

小倉:一番は、部下の話を我慢して聞かなきゃならないと思っているのが原因でしょう。まずは傾聴役に徹しましょうと言うと、「ああ、我慢して聞くやつですね」と返ってくる。この捉えがそもそも違うんですよ。

傾聴って我慢するものじゃなくて、すごく良いことなんです。だからワクワクしてやってほしいです。

「傾聴ってすごく役に立つな、もっとやりたいな」って。それを我慢してやるんだったらやめた方がいいですよ。

小澤:傾聴は、我慢ではなくワクワクなんですね。

小倉:そうです。しかし、そもそも傾聴してもらって喜んだ経験を持っている人が少ないんですよね。だから、まずは私がしてあげるんです。そうするとこんなふうに言ってくれますよ。

「小倉さんが30分ずっと聴いてくれた」
「こんなに頭が整理されて、こんなに気持ちが穏やかになるのか」
「聴いてもらうってすごいな、よし、部下に対してもやってやろう」

って。

企業で「部下を褒めなさい」って研修を受けてもできないのは、自分が褒められた経験が無いからなんです。テクニックだけを教えたら不自然で、ロボットみたいになります。

上司から1度も褒められたことがない人に「部下を褒めなさい」って言ってもどうしていいか分からないですよね。それと同じで、やってもらった嬉しさを知らない人は傾聴もできません。

小澤:確かに言われてみればそうですね。

小倉:だから、その人に褒められて嬉しい、認められて嬉しいって体験をしてもらうしかないんです。

1番良いのは会社の上司が部下を褒めることですよね。

ですが、もし部長自身に褒められた経験がなければ部下を褒めることはできません。なので、部長が取締役に褒められる必要があります。

社長も同じで、部長を褒めるためには他の人から褒められる必要があります。でも上がいない。だから、私が褒めてあげるんです。

小澤:良い意味のトップダウンで、社員全員が褒められる風土を作っていくわけですね。

小倉:はい。組織改革って、体験を上から順番に下ろしていくものなんです。だから最近私が思うのは、褒め方を教える以上に実際褒めてもらう体験、喜びを体験してもらうことが大事だと言うことです。

実際に最近、上場企業の役員のカウンセリングやコーチング、1対1のセッションをしていく仕事がすごく増えてきています。

小澤:そうなんですね。確かに、トップが傾聴の素晴らしさを理解したら、どんどん組織に浸透していきそうです。

経験が人を成長させる

経験が人を成長させる

小倉:良いカウンセラーは、やはりたくさんカウンセリングを受けないとなれないと思っています。私もプロの人にお金を払って100回くらいカウンセリングを受けてきました。

実際にカウンセリングを受けて「こんなに関係が変わるのか」「こんなに心が楽になるになるのか」という経験を100回すると、カウンセリングに自信を持って人にやってあげたくなるし、出来るようになるんです。

小澤:経験によって自信がつくんですね。

小倉:そうです。「カウンセリングが自分にはこれだけ効果があった」という経験があるから、それが揺るぎない自信になって、自分がやるときにも自信を持って自然体できるようになるというわけですね。

それがないままマニュアルに書いてあるものをやっても自信ないし、迷いながらやることになります。

だから、1番大事なのはやっぱり体験なんです。

小澤:それは起業も同じですよね。マニュアルや起業方法のノウハウだけを勉強しても自信はつきません。実際にやってみて、成功体験を得る中で自信ってついていくものです。

これからの目標

これからの目標

小澤:最後にこれから小倉様が精力的に活動していきたい、何かそういう目標と、これから起業する方に対するアドバイスを頂けたらなと思っております。

小倉:今後は、より個に深いところにアプローチしたいです。

小澤:それはなぜですか?

小倉:これまでコンサルを27年間やってきた中で、最初は、人事制度を作って制度で会社全体を変え、制度というもので広く浅くアプローチをするという方法を取ってきました。ですが、それだけでは組織は変わらないということがわかってきたんです。

小澤:そうなんですね。

小倉:なので、次に研修で少人数にアプローチするようになりました。30人〜50人の研修です。でも、それでもまだ薄く広い。
もっともっと深く狭く。そういう思いから研修メニューの一つに僕自身が1on1の上司役をやり部下の立場を体験してもらう、という1対1の体験カウンセリングメニューを導入してもらう企業が増えてきています。
どんどん人数を減らして、「広く浅く」ではなく「狭く深く濃く」という変化ですね。

小澤:アプローチの仕方が変わってきたんですね。

小倉:はい。今はそれをもっと突き詰めていきたくて、深さの面でも面談やコーチングじゃなくて、カウンセリングをしています。

場合によっては、その人の幼少期の育ちやトラウマに触れるとか、両親との関係に触れるとか。そういったものが、実は経営にものすごい影響を与えているんですよ。

小澤:生育環境はその人の価値観に強く影響を与えるものですからね。

小倉:そうです。中小企業の社長で部下を怒鳴り散らしてるという構図って多々ありますよね。これって心理学的に言うと、その多くが親子関係を再現しているんです。

その人は、自分が父親に怒鳴りまくられていたわけですよ。もしくは父親に対して言いたかったことを部下に言ってたりとか…そういうことが会社で頻繁に起きているんです。

でも、心理学を学んでいないと部下との関係が親子関係の再現だなんて誰も分かりませんよね。

小澤:そうですね。

小倉:特に中小企業、ベンチャー企業っていうのは、大企業と違ってオーナー社長の影響がとても濃いんです。

だから、オーナー社長の深いところが癒されて、社長自身が持つ問題を解消すれば、組織があっという間に変わりますよ。

そういう意味では今、大企業の取締役、上場企業の役員とのカウンセリングが多いですが、個人セッションをやってるのは中小企業の社長が多いです。

これからの起業家へのメッセージ

これからの起業家へのメッセージ

小倉:一昔前は経営と心理学って相容れないものでしたよね。でも、少しずつ心理学を大っぴらに語れる時代に変わってきました。

その上で言わせてもらうと、みなさんが思っている以上にマーケティングでの商品開発の問題や他社との関係が、個人の内面的な問題を投影しているということです。

そこに気づくことができなければ、商売の問題も他社との関係上の問題も、何も変わりません。

だから、まずはあなた自身の問題を解消してあげることが何よりも先決です。

ビジネスなのでお金を稼ぐことも重要です。しかし、まずは自分の内面をクリアにしないといけませんので、ぜひそこにフォーカスしてみてください。




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『幸せな経営者』を1,000人輩出する

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