ひきたよしあき氏インタビュー「思考を言語化することがやりたいことを見つける鍵」

Amazonレビューでも好評を博している『博報堂スピーチライターが教える 5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』

その著書・ひきた よしあき氏は政治・行政・企業トップのスピーチライターとして幅広い業界で活躍をされています。

今回の記事では、そんなひきた氏に「思考を言語化することがやりたいことを見つける鍵」をテーマにインタビューをしました。

言葉は大きな海に浮くジグソーパズル

言葉は大きな海に浮くジグソーパズル

小澤:私も著者『​博報堂スピーチライターが教える ​5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』を読ませて頂きました。

弊社は起業スクールを運営させて頂いておりまして、その中で「やりたいことが見つからない」「起業アイディアをなかなか考えられない」という問題の1つの原因として言語能力の不足があると考えています。

やはり、人間は頭の中でも言葉を使って考えますから、まずは言葉で表現ができないといけないと思っています。

今回のインタビューでは、どうすれば自分の言葉で考えられるようになるのかという点をお聞きしていきたいです。

ひきた:まず理解しておかないといけないのは、人間の脳みそってそんなに出来が良くないってことなんです。

イメージとしては、大きな海に感情という波がどっぷんどっぷんと立っていて、言葉は海面に浮くジグソーパズルのようなものです。

だから、嬉しかったり悲しかったり怒ったりって波がいつも来ていて。一生懸命、頭の中で言葉を組み立てようとしても、感情が来て嬉しかったらふぁーっと散っちゃうし、それから悲しいことがあればまたふぁーっと散っちゃうしっていう。

小澤:喜怒哀楽の感情が起こるたびに、言葉はどこかにいってしまうということですね。

ひきた:そうです。だから、いくら頭の中でこう組み上げようと思っても感情の波が来るたびに頭の端に追いやられてしまうんです。

頭の中で言葉を整理しようとするなら、本当に座禅組んでメンタルを安静に保って…っていうことが必要になるんですが、そんなことなかなかできませんよね。

小澤:特に忙しい現代では、なかなか難しいですね…。

言葉を組み立てるには声に出し、書くこと

言葉を組み立てるには声に出し、書くこと

ひきた:じゃあ、どうやって人間の思いを言葉にしていくかっていうと、1番は声に出すってことしかないんですよね。それからもう1つが紙に書くってことなんですよ。脳みそで考えていることを外に出して初めて言葉化できていくわけです。

ずっと頭の中で考えていたとしても、感情という波に流されてしまうので、その都度ジグソーパズルを組み立てなきゃいけません。

だから、紙にして考えるとか、言葉にするってことが大事なんです。

例えば、神社に行く時でも、願い事は小さな声でつぶやきなさいって言いますよね?あれは考えを声に出すということの1つですよね。言葉にしないと、頭の中で思っているだけじゃだめなんです。

スティーブ・ジョブズがいつも鉛筆を持って紙に書いていたって言うのも、頭の中で考えるだけじゃダメってことですよね。

小澤:アウトプットして初めて、頭の中が整理されるという。

ひきた:そうですね。これは起業するときでも同じで、やりたいことやアイデアを頭の中だけで考えていても絶対に整理はできないんです。その都度、感情の波が立ったら考え直しになっちゃうから。

そうすると1番大事なことは、まずノートを1冊用意して、自分の思いっていうのを紙に書くっていうことです。

私が博報堂でよくやっていたのが「ライティングマラソン」でした。これは、今頭の中で思ってることを全部言葉に書いていくというものです。

小澤:例えば、どんなことを書くんですか?

ひきた:文字通りなんでもいいんです。「雨が降ってる」とか「腹が減った」とか。それをやっていくと「私ってこんなに色んなことを考えるんだ」ということが分かるんですね。

これを起業に活かすとしたら、起業をテーマに思いついたことをなんでも書いていくんです。そうすれば、自分の頭の中で起業について思っていることが視覚的に分かってきますし、整理もされていきますよ。

小澤:その時の自分の思考をを言語としてしっかりアウトプットしていくことがとても大事なんだということが良く分かりました。

クリエイティブジャンプを起こす

クリエイティブジャンプを起こす

ひきた:思いを徹底的に言語化していく力は必要です。悩んでいる人の多くは、頭で考えていて、書いていないんですよ。

博報堂ではコピーを書く時に「とにかく100案出せ」って言われます。コピーっていうのは100案出してからが勝負だと。

だから、毎日100案書くわけですよ。アイスクリームならアイスクリームについて100案、100案、100案…って。そうすると、そのうちわけが分からなくっていくんです。もう書くことが無くなってくる。

その混沌とした中で起こるのが「クリエイティブジャンプ」なんです。

小澤:「クリエイティブジャンプ」?

ひきた:考えを出し切った中で突如として出てくる「これだ!」っていう案ですね。

博報堂のコピーライターは、ヘトヘトになりながらこのクリエイティブジャンプが来るまで書き続けるわけです。

これを起業に活かすとしたら、まず1つについて30案考えると。例えば、30職種を考えてみるといいですね。で、そこで終わらずにプラス3案を考えるっていうのがすごく大事なんです。

小澤:著書にも「33案」のことは書かれていましたよね。

ひきた:はい。33って中途半端なところで止めると、「あれ?他にもまだあるなぁ」とか、頭の中で考えちゃうんですよね。別に33案でも34案でもいいんだけど、中途半端なところで止めるってことが大事なんです。

30っていうキリがいいところで終わっちゃうと、「十分に考えた」「やり切った」って思っちゃうでしょう?

小澤:確かに未完全のまま作業を終わらせたら、ムズムズして考え続けてしまいそうですよね。なんとなくそれって「ポモドーロタイマー」と似てるな、と思いました。あれも25分間で絶対に切って、作業をあえて中途半端に終わらせる。そうすることで、休憩後にも効率よく取り組めるという理屈でしたよね。

エピソードノートを作る

エピソードノートを作る

ひきた:思考を言語化する術として、1つ目に声に出すこと、書くことを紹介しました。2つ目ののやり方にエピソードノートというものがあります。

これはノートの見開きを使うんですけれど、例えば、左側のページの上に18歳と書きます。そして右側にはその時に世の中でどんな動きがあったのかを書いていきます。例えば、「この年は政権交代があった」とか「コロナ禍に入った」とかね。これを0歳から今の年齢まで全部やっていくんです。

小澤:なるほど。Wikipediaなどを見ながら書くと良さそうですね。

ひきた:そうそう。それで、どんどん自分の過去を追い込んでいくんです。そうすると、「中学の時にあの本読んだなぁ」とか「あのイベントが楽しかったからイベント好きになったのか」とか「あの時に得意って言われたから経理の方に進もうと思ったのか」とか。自分が変わったきっかけが見つかってくるわけです。

私は博報堂に入る時にこれをやらされたんです。そうしたら、私が10歳の時に大阪万博があって、そのイベントがとても大好きだったことを思い出しました。万博ってそれぞれの企業にテーマがあって「住友童話館」とか、100いくつのテーマを意味なく覚えていたんですよね。

それを思い出した時に「私ってもしかしたらコピーが好きなのかも」って気づけたわけです。

そうやって子供の頃の思い出とか得意だったもの、感動したものって自分の潜在意識のすごい奥にまだ残っているんですよ。そこを起業で満たしてあげてもいいんじゃないかな。

小澤:このストーリーノートがひきたさんの進路を決めるきっかけになったんですね。

ひきた:そうです。これって「これは今流行ってる」とか「これは儲かりそうだ」っていう動機と全然違いますよね。やっぱり起業するなら、自分が喜びながら続けられるものじゃないと。

そのためにエピソードノートを作って自分は何に感動する人間で、何をやっていると幸せかというのを見つけないといけません。

30歳くらいになると、16歳の自分と17歳の自分の区別がつかなくなってきますよね。「あれって何歳の時なの?」って。でも、ストーリーノートを使ったら「あの時に別れた女にこう言われた」とか「あの時こんな本を読んで感動した」とか、割と思い出してくるんです。

自分を深掘りするってことをしていくっていうのが、起業のためにはものすごく大事だと、私は思いますね。

小澤:就活の自己分析で、自分の人生を折れ線グラフで表現してみたりしますよね。でも、見開きでストーリーノートを作るっていうのは初めて聞きました。右側には世の中の出来事を書いて…左側には年齢と何を書くんでしょうか?

ひきた:自分の思い出を書いていきます。箇条書きでもなんでもいいので、どんどんメモしてOKです。それで右側には客観的な情報を書いていくと。

小澤:確かにその時の感情とか思い出って、その時に世の中で起こった大きな出来事に結びついていることがありますよね。東日本大震災の知らせをテレビで見てこんなことを感じてたな、とか。

後、先ほどおっしゃってた通り、起業するとなると「これが儲かる」とか「このビジネスモデルはいける」とか、そういう観点に重点を置きがちになりますよね。もちろんビジネスなので大事なんですが、原初体験として自分が本当に心から楽しかったことであったり、魅力を感じるものも大事にできたら理想ですね。

ひきた:放っておいてもトレンドはどんどん出てきますよね。そこに乗っかっていくのはアリだけれど、市場にもライフサイクルがあるからいつかは衰退期が来るんです。その時にも自分のビジネスとして続けて行けるかどうかは、やっぱり楽しいかどうかなんですよね。

そして、楽しいかどうかは自分の根源的なところに結びついているので。食について起業をやろうというとき、「友達に手作り料理を喜んでもらえた」みたいな体験があったら強いと思うんですよね。

そういうところまで掘り起こしていくというのがすごく大事なことです。

「弁証法」ヘーゲルノート

「弁証法」ヘーゲルノート

ひきた:3つ目の手法が、ヘーゲルノートと呼んでいるものです。これは、ヘーゲルの弁証法を使ったもので、自分が出した答えに対して徹底的な反論を書いていくんです。

例えば「健康ビジネスをやりたい」と書くとします。そうすると、それに対する反論を死ぬほど書いていきます。「競合他社が数え切れないくらいあるぞ」とか「明らかに出遅れてるぞ」とか「健康・医療系は参入が難しいぞ」とか。これを全部、左のページに書くわけですね。

それで右のページには、やりたいことと反論を受けた結果どうしたらいいのかを書いていくんです。

小澤:まずは自分の頭の中で徹底的に反対意見、つまり失敗要因を考えていくんですね。

ひきた:そうです。自分で自分に反論することって大事ですよ。「やりたい、やりたい」だけで、やっちゃうとたいていは失敗しますよね。

でも弁証法でちゃんと詰めておけば「お前、これどうなんだ?」って言われた時に「それはもう考えてます」「その件は十分考えました」って言えますよね。そこまで突き詰めると、本当にやりたくなってくるわけです。

自分のアイデアを熟考するのはとても大事で、その具体的な手法としてヘーゲルノートを使うのはとてもいいですね。

小澤:新しいアイデアを考えた後、自分の中で弁証するというのは、すごく大事なことだなと思っています。やっぱり都合のいいところしか見ようとしないっていうのが人間の癖なので、理詰めでしっかり穴が無いのかどうか、穴があったらどう対処していくのかっていうのを体系的に実現できるのがヘーゲルの弁証法なんだな、と私も著書を読みながら思っていました。

二項対立の時代にこそ弁証法

二項対立の時代にこそ弁証法

ひきた:今って二項対立の時代になっちゃってるんですよね。色んなものが対立する時代で、これはやっぱりインターネットによって自分に都合の良い情報だけが集まるっていうことが大きいんです。

「この人、こういう記事見てるんだな」AIが勝手に判断して、類似記事ばかりが集まってきてしまうようになっていますよね。そうすると、これが世の中だと思っちゃうところがあるわけです。

そうなってくると、反対派の意見とか批判する人の意見を聞かなくなるんですよね。特にコロナで部屋にこもりっきりだと余計にそれが顕著になってしまいますよ。

小澤:それはありますね。YouTubeでも1つの思想に偏った動画ばかりが連続で再生されるという問題が起こっていましたよね。でも、そればかりでは先入観が生成されてしまう、と。

ひきた:そうなんです。でも、それは起業アイデアを考える時も同じで、反論を考えずに世の中に出すとガツンとやられることはありますよ。だから、自分の中で相当自分の意見を叩いて置かなきゃいけません。

小澤:そうですね。この弁証法のやり方は起業アイデアを作る際にも有効ですし、先ほどの33案を精査する際にも使えそうですよね。時間はかかりますけど、玉石混合の33案の中から有望なアイデアを見つけるためにはやっておくと良さそうです。

ひきた:批判的に自分を見るっていう視点を持ってないと、世の中に出る時にすごく苦労すると思うんですよね。だから、常に自分を批判する、弁証する目を持つってことはすごく大事だなって思いますね。

「なぜ」を5回聞く

「なぜ」を5回聞く

小澤:弁証法に近いところで、著書の中でも「”なぜ?”を5回聞く」というお話が出ていました。これって、まさにトヨタみたいな強い企業がやっていることで、「なぜそうなのか?」って徹底的に詰めていくのは本当に大事ですよね。

最初にひきたさんがおっしゃっていた通り、言葉は感情の波に浮いているジグソーパズルの1つ。だからある意味、一過性を持つ存在なんだと思うんです。だから、時が経てば全く別の考えが生まれたり、「これだ」と思って発してみたものの、表面的でしかなかったり。

だから、起業アイデアでもなんでも「なぜ?」を繰り返して深めていくというのはとても良いな、と思いました。

ひきた:「なぜ」を5回聞くというのは、ほとんどヘーゲルの弁証法に近いですよね。自分に対して「なぜ?なぜ?」ってやっていくと、もっと深く答えていかなきゃいけないから詰めざるを得なくなります。

トヨタがあそこまで強いのは、やっぱり徹底的に詰めていくからなんですよ。でも、これはトヨタじゃなくてもできるし、個人事業主でも、まだ起業していない人でもどんどん「なぜ?なぜ?」と詰めていくといいですよね。

未来の記者会見

未来の記者会見

ひきた:あと1つだけ大事なことをしますね。それは、自分が大成功した時のことを思うっていうことです。

例えば、大成功して自分が記者会見をしているとするじゃないですか。そこでみんなからこんなことを聞かれます。

「あなたはどうしてそんなに成功したんですか?」「あなたの成功の要因はなんだったんですか?」と。

小澤:成功後をイメージして、その成功要因を語るわけですね。

ひきた:そうです。私がよくおすすめするのは、母校での講演です。スティーブ・ジョブズ がスタンフォード大学でやったみたいな。あれは母校じゃないですけどね。

自分はいったいどういう状況の中で勝機を見出したのか。それから、自分は何故これをやろうも思ったのか。自分はどんなお客さんに訴えかけようとしたのか。自分はどんな苦労を乗り越えようとしたのか。他との違いは一体何だったのか。自分は今どんな風に喜ばれているのか。

これをすると、今の起業アイデアに対して不足している部分が明らかになってくるんです。「ターゲットが決まってないな」とか「他社との違いがないな」とかね。

小澤:成功要因をありありと語れるということは、そこまでの道筋が明らかになっているということですもんね。そこが語れないということは、まだ詰め切れていない要素があると。

ひきた:「あれやりたい、これやりたい」じゃなくて、ゴールした時に自分はどんなことを語っているのかということを考えるといいと思うんですよ。

今言ったのは『スルーされない人の言葉力』という本の中にある「物語共有シート」を使ってもらえたらと。このシートを自分に当てはめながら「こんなところに勝機を見た」という視点で自分の物語を書いていくんです。


なぜこの商売を選んだのか、なぜこんな人をターゲットにしたのか。実はこんな苦労があって、他社とはこんなところが違うんだ、と。

小澤:ひきたさんがおっしゃった未来の記者会見と全く同じ手法で、起業セミナーや社内研修の中でも「フューチャーインタビュー」という手法が用いられることがありますよね。

起業を志す人の多くが「これをやりたい」という視点で考えてしまっています。これはフォアキャスティングの手法で、まだ未来のことだからイメージも曖昧になってしまいます。

そうじゃなくて、未来の姿から逆算して現在行うべきことを考えるバックキャスティングの視点を持つべきだと。逆算型思考で物事を考えれば、大きく道から外れることはありませんし、ゴールまで一直線で進ことができるのだと当スクールでもお伝えしています。

死から逆算して今を生きる

死から逆算して今を生きる

ひきた:アメリカで多くの経営者が「死生学」を学んでいますよね。スティーブ・ジョブズは禅を取り入れたことで有名ですけれど、いずれ人は死ぬんだから死から逆算して今を生きることが大事だと思うんです。

小澤:究極のバックキャスティングですね。

ひきた:自分が死んだ時に友人が弔辞を読むことをイメージしてみるんです。後は、自分のお墓に刻む墓碑銘を考えてみます。

スティーブ・ジョブズは禅の修行でこれをやったそうなんですが、その時に

「I want to put a ding in the universe.(僕は宇宙を凹ませたい)」

なんてことを言っていたそうですね。こういう死生学がアメリカにはよく根付いているんですよ。

小澤:そうなんですね。あまり日本では死を意識して生きる…ということを強く意識する機会って少ないですよね。

ひきた:日本のお葬式と違って、アメリカでは友人が弔辞を読むからかもしれませんね。そういった機会があると、その時になんて言われたいか、墓に何を刻むかというのは究極のバックキャストなわけですよ。

アメリカの経営の世界では、その境地に至るまで考えろって言われるそうですね。また、死生学の授業はすごい人気があると聞いたことがあります。

小澤:何年か前にイェール大学の講義で、死がテーマの本が話題になりましたよね。死んだ時に人からどう思われる人物になっていたいのかを中心に考えることで、今をよりよく生きれるという。

ひきた:弔辞で何を読まれたいかって、私は慶應大学のある先生から聞いたんですよね。それで実際に私自身も弔辞を書きました。いろいろな人に言葉を教える立場だからというのもあるけれど、これはできるだけ多くの人に伝えていきたいと思っています。

小澤:死というゴールから逆算して、そのゴールに向かうために起業というものを考えられると理想的ですよね。自分の人生に仕事が重なることによって、より真剣に考えられるようになると思いました。

当スクールでも「死ぬ時にどうなっていたいのか?」というのは、とても大事にしています。ハワイの別荘で仲のいい友達と家族に囲まれているというのでもいいですし、「我が生涯にいっぺんの悔いなし!」って言って逝去するのもいいですし。

その状態に至るために今何ができるのか?どんな起業をすればいいのか?何歳までにどこまでの域に達する必要があるのか?

こういった人生の目標からの逆算を、今後も受講生の皆さんに広めていきたいと改めて思いました。

最後は「話を聞く」こと

最後は「話を聞く」こと

小澤:『​ ​5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』のラストシーンでヨーグルトメーカーの社長さんがスピーチされる場面がありましたよね。

この本はそういったジャンルではないと思うのですが、思わず感動してしまいました。言葉にはやっぱり人を動かす力がありますよね。

ひきた:あの本と『スルーされない人の言葉力』のちょうど2冊で、言葉を表現する方法についてはかなり深掘りができたと思っています。

とにかく大事なのは、目の前のトレンドだけじゃなくて自分を深掘りしていくということだというのが私の1つの思いです。

小澤:トレンドだけを追っても、熱意が持てなければ続かないですしね。

ひきた:それと最後になりますが、私も起業する時には本当にいろいろな人にお話を聞きに行きました。

例えば会計士や法律家に「生活はどうなの?」とか「保険どうなの?」とか。生活全般がどうなるかっていうところのリアリティがないと起業ってできないんですよ。

だから、これやりたい、あれやりたいという気持ちよりも、病気になった時どうなるんだろうとか、税金の支払いどうなるんだろうとか、いわゆるこの国のルールの中でどうやって生きていくのかっていうところをリアルに知る必要があります。

小澤:自分が目指すところにすでに至っている人の話を聞くのは大事ですよね。

ひきた:そうそう。そういうリアルなところは、どんなにセミナーに行っても分からないんですよね。結局リアルにやってる人に話を聞くのが一番です。

「こんなところが大変だったよ」とか、普段聞けない話をたくさん集めていくうちに、だんだん自信がついてくるから。

小澤:よりリアルな世界もしっかりと把握していくということですね。メリットもデメリットも含めて知るべきだと。

ひきた:今はZoomで繋がることもできるし、友達の本音みたいなところが聞きやすくなりました。

私の周りを思い浮かべると、やっぱり起業して上手くいってる人は、みんなそういう情報網が発達してたように感じます。

だから、まずはやりたいことを深掘りして、同時に信頼できる友達に話を聞くということ。この両方をやることがいいんじゃないかな、という風に思いますね。

小澤:なるほど。今回は著書にも書かれていないことでをたくさん語っていただき、とても価値のあるインタビューになったと思っております。ありがとうございます。

これからの目標

これからの目標

小澤:最後に、ひきたさんの今後の目標とをお聞きできたらと思います。

ひきた:私は長い間、博報堂でコピーライターをやっていて、そのあとスピーチライターとして企業のお詫び会見とか、政治家のスピーチとか、結構どろどろした言葉を書いたりしてきました。

それと同時に子供の教育や大学での講義など、まだ言葉というのが全然分かっていない人たちに対して言葉を教えたりもしています。

その中で思うのは、言葉の力は強いということです。

これからはZoomなんかで話をする機会もどんどん増えていきますし、対面じゃなくなっていくということは、自分の発することがもっと大事になっていくということなんです。

「文を書くのが苦手なんです」「うまく話せないんです」って人もいるけれど、私は言葉が苦手な人っていないと思ってるんですよ。でも、日本ではスピーチやプレゼンのやり方を教える土壌がないですよね。だから、長い人生の中できっと自分の言葉が通用しなくなる日が来ると思います。

だから、私は若い人たちに言葉の力を強くする術を伝えていきたいと思っています。特に言葉にするのが苦手だと思っている人、言葉がまとまらない人のように、言語表現に自信がない人たちに対して、そう思っています。

簡単に言葉を表現できるノウハウを教えて、実際にできるっていう自信を深めてもらう。そこを1番の喜びにできるような仕事を中心にやっていこうと思っています。