新規事業立ち上げの手順|成功のコツとフレームワーク11つも徹底解説

市場の発展・衰退が激化している今、どの企業も新規事業の立ち上げは必要です

今年まで最大収益を上げていた一事業が、来年には赤字転落という可能性もあります。そのため、常に新たな事業の立ち上げを検討すべきなのです。

本記事では新規事業の立ち上げ手順を6つのステップで徹底解説。また、新規事業を考える際に役立つフレームワークと成功のコツも網羅しました。

経営に不安を抱えており、新規事業の立ち上げを検討している方はぜひご覧ください。

目次

新規事業の立ち上げとは

新規事業 立ち上げ

新規事業の立ち上げとは、企業が新たなビジネスを始めることです。従来とは異なる事業を立ち上げる場合には「事業の多角化」などと呼ぶこともあります。

新規事業立ち上げと起業・開業の違い

起業・開業は法人登記や開業届の提出を行い、ゼロから事業を始めることを指します。一方、新規事業の立ち上げには、既存企業が別事業を作ることを指します。

この点において、新規事業立ち上げと起業・開業は異なります。

新規事業立ち上げのメリット2選

はじめに「どの企業も新規事業の立ち上げは必要」と述べました。では、企業にとって新規事業立ち上げのメリットは何でしょうか。2点を解説します。

収益を伸ばせる

新規事業を立ち上げることで、会社全体の収益を伸ばせる可能性があります。特に既存事業とのシナジー効果が生まれた場合、収益性の拡大はより期待できます。

シナジー効果
複数の事業が連携し、一事業では発生しない相乗効果を生み出すこと。例えば、事業Aで生産していた機械パーツを事業Bで転用できれば新たな設備投資を必要とせず収益性が拡大できる。

経営リスクを下げられる

企業が一事業のみに依存すると、その事業の収益性が下がった際のリスクが大きいです。複数事業を保有することで会社全体の収益は安定し、一事業の収益が低下しても組織として業績の下落幅を軽減できます。

新規事業立ち上げの手順を6ステップで解説

新規事業 立ち上げ

ここまで読んでいただいた方には、新規事業を立ち上げる必要性を理解いただけたでしょう。

ここでは新規事業を立ち上げる基本的な手順を解説します。業界や企業の現場によって詳細は異なりますので、どの組織にも必要な新規事業立ち上げの本質のみを抽出しました。

ここで解説する手順を貴社に当てはめていただければ、無駄なく、迅速に事業を立ち上げることができます。

事業の理念を明確にする

「事業を通してどんな価値を提供するのか」を先に決めることで、事業内容を決める際にブレません。提供する商品・サービスは価値を提供する際の手段として捉え、貴社の理念を明確にしましょう。

市場の需要を見つける

事業の基本は買い手の存在です。商品・サービスありきの事業では需要がない可能性もあり、事業を立ち上げても売れない可能性が高いのです。そこで、まずは市場にある需要を探しましょう。

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事業を展開する領域を決める

需要を発見した後、事業の展開領域を決定しましょう。展開領域には「物理的定義」「機能的定義」という2つの決め方が存在します。需要ありきの新規事業立ち上げでは、機能的定義で考えることをおすすめします。

新規事業 立ち上げ 物理的定義 機能的定義

上図のとおり、物理的定義は提供物が明確ですが発展性・柔軟性に乏しいです。一方、機能的定義は目的が明確で、提供物は手段と捉えているので事業の発展性・柔軟性が高いです。

極論、目的が達成できれば提供物にこだわる必要はありません。ステップ1で決めた理念をもとに展開領域を決めましょう。

市場調査をする

理念・提供物・展開領域が決まれば、事業を形にすることはできます。しかし市場にはライフサイクルがあり、競合他社も存在します。このような外的要因を事前に調査しなければ事業立ち上げ後に成功できるかはギャンブルになってしまいます。

市場のライフサイクル

市場のライフサイクルは、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つに分けられます。

起業 成功 例 週末 ライフサイクル理論

一市場で生じる利益の85%は導入期・成長期にあると言われており、成熟期・衰退期に参入したら残り15%の少ないパイを競合他社と奪い合わなければなりません。

このため、導入期・成長期以外の市場参入はイノベーションを起こせる事業立ち上げでもない限りはおすすめできません。

競合調査

競合調査の方法はたくさんありますが、ここでは一例としてポジショニングマップを紹介します。

ポジショニングマップとは、事業に重要な2つの指標で作成したマトリクス図に競合他社をマッピングし、参入できるポジションを探すフレームワークです。

ポジショニングマップ

上図の場合、「濃味・低カロリー」のビールに競合が存在しないため、そのポジションが参入機会のある市場です。

次項で新規事業立ち上げのフレームワークを紹介していますので、詳細はそちらをご覧ください。

商品・サービス提供に必要な環境を作る

新規事業立ち上げのアイデアがあっても、必要な資源がなければ形にはできません。貴社に下記3つのリソースがそろっているか、準備できるかを確認しましょう。

  • 資金
  • 人員
  • ノウハウ

資金

事業立ち上げのための資金や、立ち上げ後当面の運転資金などを計算しましょう。設備投資や人件費は想定以上に大きくなる場合が多いため、多めに見積もる必要があります。

人員

新規事業のアイデアを形にし、運営できる人員を確保しましょう。役割を先に決めることで、必要な人数や人員を計画できます。

ノウハウ

商品・サービスを作り、提供するまでのノウハウがあるか確認しましょう。ない場合は育成、もしくは外部からの調達を検討しなければなりません。

事業計画を作る

最後に、具体的なアクションプランを落とし込んだ事業計画を作成します。ここで重要なのは「担当者・締め切り・タスク」の3点を詳細に決めておくことです。どれも実現可能な条件で決めることで、事業計画を無理なく実行できます。

新規事業立ち上げを成功させるコツ7選

新規事業 立ち上げ

ここまで新規事業立ち上げの手順を解説しました。先述の通り、手順ではどの組織にも必要な新規事業立ち上げの本質のみで留めましたので、ここでは成功のコツをより詳細に解説します。

事業立ち上げ過程の無駄をなくす

できるだけ無駄のないプロセスで新規事業を立ち上げるようにしましょう。この際、リーンスタートアップのサイクルを意識することで無駄を削減できます。

新規事業 立ち上げ リーンスタートアップ

上図の通り、このサイクルでは5つのフェーズを起点に事業立ち上げ〜改善までを行います。

  1. アイデア作り
  2. 事業構築
  3. 事業化
  4. 分析
  5. 改善

最小費用でテストし、小さく改善を重ねることで市場の需要に最適な事業を作り上げることができます。

市場の需要に応える事業立ち上げ

商品・サービスありきのプロダクトインではなく、需要ありきのマーケットアウト思考で事業を立ち上げましょう。プロダクトインの場合、顧客への認知から始める必要がありますが、マーケットアウトならすぐに買い手を確保できるからです。

「良い商品なら売れる」という考え方は市場の需要とズレている可能性を考慮していません。出せば売れる商品を見つけ、それを事業化することが新規事業立ち上げの成功につながります。

自社の強みを意識した事業モデル作成

市場の競合他社との差別化を図るため、自社の強みを意識した事業構築をしましょう。

USP(Unique Selling Proposition)は、独自性・売り・提案の3項目から商品・サービスの強みを表す用語です。

起業 成功 例 USP

自社ならではの強みでありつつ、消費者が欲しがるものがあれば、それは差別化要因となり得ます。そういった点を強く押し出した新規事業の立ち上げがおすすめです。

十分なシェアが取れる市場規模に参入

新規事業の立ち上げをした際に十分なシェアの取れる市場規模かどうかの確認も必要です。なぜなら、市場の消費者数が少なければ、強い需要があっても事業が成立するだけの収益を得ることができないからです。

まずは、マス視点で市場規模を把握しましょう。市場規模マップでは国内主要市場の規模を視覚的に理解できます。

さらに細かい市場規模については、主要企業複数社の売上高から推定することができます。

また、現時点での市場規模だけでなく、将来的な市場規模にも目を向けましょう。せっかく新規事業を立ち上げても、その時点よりも市場規模が縮小していくようでは十分な利益を確保できなくなるからです。

市場のライフサイクル理論では、導入期・成長期の参入をおすすめしました。成熟期・衰退期にある市場への参入は避けましょう。

明確な事業計画の策定

新規事業に関する計画(事業計画)の策定を行いましょう。事業計画とは、その事業の目標、目標を達成するためのアクションプラン、収支計画などを指します。

事業計画を策定しておくことで、企業には3つのメリットがあります。

経営戦略の見直しがしやすい

新規事業の立ち上げ後、状況によっては戦略を変更する必要があります。その際、事業計画を見直すことで失敗要因を特定しやすくなります。反対に、無計画な事業運営をしていると、事業がうまくいかない原因が明確になりづらいです。

方向性の確認がしやすい

複数人で新規事業の立ち上げから運営までを行う場合、1つの指針があると方向性を確認できます。どの時期にどういった施策を行うのか、担当者は誰なのかまで決めておくと、各人が役割を理解して自主的に行動できます。

資金調達がしやすい

新規事業の立ち上げ時に融資・出資を受ける場合、事業計画書が必要です。なぜなら、金融機関や投資家は事業計画書の実現可能性を判断して融資・出資を決めるからです。このため、第三者が納得できる客観的な視点で書かれた計画書があれば、資金調達をしやすくなります。

自己資金での起業がおすすめ
当スクールは自己資金での起業を推奨しています。失敗時に負債を抱えるリスクを避けるためです。融資・出資を受けるにしてもできる限り最低限に留め、低資金で成果を最大化するマーケティングスキルを学びましょう。

低資金で小さくスタート

新規事業立ち上げの際、できるだけ初期費用を抑えることが大切です。初期費用とは、商品・サービスの開発費用や設備投資、プロモーション費用など、事業立ち上げ時にかかる費用を指します。

初期費用を抑えるべき理由は、その事業が成功するかどうか未知数だからです。大金をかけて事業を立ち上げだ結果、失敗する可能性も十分にあります。立ち上げ時に融資を受けた場合、負債だけが残ります。また大投資をした場合、撤退時期を見誤り、経済的に致命傷を負う可能性もあるのです。

まずは最低限の費用のみで事業を立ち上げ、収益性を確認できた後に投資額を増やしていきましょう。収益が得られないと判断した場合はすぐに徹底することもできます。

テストマーケティング
一部地域などで小さく事業をテストする施策をテストマーケティングと呼びます。本格的に事業を始める前に需要を確認することで、安全に事業立ち上げが行えます。他にも限られた予算で広告を出稿して反応を見るなど、様々な手法があります。

顧客のフィードバックを反映させる

事業立ち上げやテストマーケティング後のフィードバックを事業に反映させましょう。どれだけ社内で改善を繰り返しても100%完成した商品は作れないからです。

消費者からのフィードバックを得る手法としては、定量調査定性調査があります。

  • 定量調査:アンケート・ネットリサーチ・会場調査など
  • 定性調査:グループインタビュー・訪問観察調査・行動観察調査

大多数の傾向を調べる際には定量調査、個人の感想などをより深く調べる際には定性調査を行いましょう。

新規事業立ち上げのフレームワーク4選

新規事業 立ち上げ フレームワーク

先述のポジショニングマップのように、新規事業立ち上げに役立つフレームワークは数多く存在します。本項では代表的なものを紹介しますので、ぜひ新規事業立ち上げの参考にしてください。

ペルソナ分析

ペルソナ分析では、事業の顧客を作り上げ、その顧客に需要のある商品・サービスを考えます。下図をご覧ください。

起業 したい けど アイデア が ない ペルソナ分析

このように対象となる顧客から、何を提供すべきなのか分析できます。

ただし、ペルソナは売り手の想像のみで作るのではなく、徹底した市場調査を通して本当に存在しうる顧客を作り上げる必要があります。そうしなければ、ペルソナに合わせて作った提供物が市場の需要に本当に応えたものとならないからです。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)

新規事業 立ち上げ MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)

MVVは、新規事業のミッション(使命)・ビジョン(未来像)・バリュー(価値観)を決める際に役立つフレームワークです。

この3点を決めることで、組織の方向性が合わせられる上に、提供すべき商品・サービスの方向性も「機能的定義」の観点で決めることができます。

3C分析

新規事業 立ち上げ 3C分析

3C分析は、自社・競合他社の強み・弱みを分析する際に役立つフレームワークです。

  • Customer(顧客・市場):需要・市場の将来性などを分析
  • Competitor(競合):競合他社の規模・強み・ポジショニングなどを分析
  • Company(自社):自社の規模・強み・ポジショニングなどを分析

市場とともに、自社・競合他社を分析することで、客観的に勝てる新規事業を考えることができます。ポジショニングマップも併せて使用すると、勝機が見つかるでしょう。

VRIO分析

新規事業 立ち上げ VRIO分析

VRIO分析は、新規事業の価値をValuable(価値)・Rare(希少性)・Inimitable(真似のし辛さ)・Organized(組織)の4点で評価するフレームワークです。

事業の価値は、他の事業が提供できないことから生まれます。そしてその価値を提供できる組織であるのか、真似できる他社がないかも重要です。そして、この点を明確にできるのがVRIO分析です。

関連:新規事業立ち上げフレームワーク42図|分析・立案・改善に役立つ

新規事業立ち上げに失敗する原因6選

新規事業 立ち上げ 失敗

新規事業の立ち上げに失敗する企業は多いですが、その原因は主に6つに絞られます。原因を知ることで、リスクを抑えた事業立ち上げができるでしょう。

撤退基準を決めないで赤字を垂れ流す

新規事業立ち上げをする前に撤退基準を決める必要があります。事業の立ち上げは手間がかかるため、事業開始後は諦めが付きづらいことが多いからです。赤字を垂れ流し、気づけば大きな負債を抱え、会社が傾くというのが最悪のケースです。

これを避けるため、撤退時期や予算を設定し、その基準を超えた段階で撤退しましょう。そうすることで経済的にも軽傷で済み、新規事業に再挑戦もできます。

事業を拡大しすぎる

期待する新規事業は、膨大な費用をかけたり人員を大幅に増やしたり、拡大させてしまう傾向にあります。しかし事業規模が大きくなるほど小回りが効きにくくなり、状況の変化に追いつけなくなります。

特に新規事業の立ち上げ時期は意思決定者の密なコミュニケーションや素早い意思決定が重要です。事業の運用方法が確立するまでは必要最低限の規模で進めることを検討しましょう。

市場参入時期が遅すぎる

多くの企業が成長期の市場で新規事業の立ち上げをしようとしますが、立ち上げ段階で時間がかかりすぎてしまい、市場が飽和状態になることも少なくありません。

競合が増えれば供給過多の状況になり、時間が経てば成熟・衰退期に入ります。そうなると新規事業を立ち上げても収益を上げることは困難です。

狙い目の市場を見つけたら素早く事業を立ち上げ、サービス提供と同時に事業を構築していくほどの速度感が大切です。

需要を見極められない

市場の需要を見極められずに新規事業の立ち上げに失敗する企業も多いです。ただ、ここで重要なのは初めから需要を完璧に見極める必要はないということです。

その代わり、テストマーケティングで消費者の反応を反映させ、需要に応えられる商品・サービスを作りましょう。

マネタイズできていない

需要を見極められたにも関わらず、収益性が低いために事業が立ち行かなくなるケースもあります。最終的にかかる費用を計算した上で価格設定をする等、最低限事業を運用できる収益を確保できるか確認しましょう。

人員・資金不足で事業が回らない

後払い商品のためにキャッシュフローがうまく回らない、事業に十分な人員がおらず運用できないため、新規事業が失敗するケースもあります。特にスタートアップ企業は事業の成長速度が速く、実態が伴わなくなることが少なくありません。

新規事業を立ち上げ後は、事業の成長速度を見ながら人員・資金が当面十分に確保できているか確認しましょう。

新規事業立ち上げまとめ

新規事業の立ち上げにはリスクがつきものですが、経営リスクの削減や収益性の拡大など、大きなメリットがあります。

現状維持ではいずれ市場が衰退した時に危機を迎えてしまいます。そうなる前に新規事業の立ち上げに取り組む姿勢を組織に根付かせましょう。

本記事で紹介した手順を参考にすれば、新規事業立ち上げの成功確率は上げられます。ぜひ何度も目を通していただければ幸いです。