「粗利」を正しく理解することによって、事業の意思決定や分析に大いに役立つことはご存じでしたか?
具体的には、適切な価格設定や、仕入値の妥当性の判断などが可能となります。その結果、事業を有利に進めることが可能となるのです。
そこで、粗利の概念や計算方法及び活用方法などをこの記事でお伝えします。

大手電機メーカーの知財部門で特許権利化、契約書作成などの仕事に従事。現在は、契約書作成、補助金申請代行、産業廃棄物許可などの許認可申請代行、遺言書作成、相続業務などを取り扱っています。
粗利とは?「利益」のうちの一つ
「粗利」とは売上高から売上原価(製造原価)を差し引いたものです。その商品やサービスが生み出している利益が分かります。
ちなみに会社の収益・利益・費用が分かる「損益計算書」には、以下5つの利益があります。
利益 | 意味 | 計算式 |
---|---|---|
粗利(売上総利益) | 売上高から売上原価(製造原価)を差し引いたもの | 売上高-売上原価(製造原価) |
営業利益 | 主たる事業で稼いだ利益 | 売上高-(販売費+一般管理費) |
経常利益 | 主とする事業以外での収益や費用を含めて、利益の計算を行うもの | 営業利益-(営業外収益+営業外費用) |
税引前当期純利益 | 法人税等の税金を差し引く前の利益 | 経常利益+(特別利益-特別損失) |
税引後利益(当期純利益) | 会社全体の利益から法人税などの諸税金を差し引いたもの | 税引後利益(純利益)=税引前利益-法人税等 |
粗利率とは?
「粗利率」とは売上高に対する粗利の割合です。
基本的に粗利率が高ければ高いほどその商品は収益性が優れていると言えますが、粗利率のみで事業の良し悪しを判断することはできません。
粗利率の高低で事業の良し悪しが図れないという点については、別記事で解説しました。また、粗利率を事業で活用する方法が気になる方にも役立つ記事があるので参照ください。
粗利の特徴
本項では粗利について理解を深めるため、以下の3点を解説します。
・競争力や付加価値の大きさが分かる
・業種によって原価が異なる
粗利は会社の基本となる利益
粗利から経費(水道光熱費・人件費など)が支払われます。このため、粗利以上に経費を使わなければ利益は会社に残ります。つまり粗利は会社の基本となる利益だと言えます。
粗利=売り上げに対する利益
粗利は実際に売れた部分に対する原価だけを差し引きます。
つまり、10個分を仕入れて6個売れた場合には、6個分の売上・原価で計算しなければならないということです。
上記のケースで、正しい粗利の計算式と誤った計算式を比較してみましょう。
販売に至らなかった分の売上・原価は粗利計算には入らないので注意しましょう。
競争力や付加価値の大きさが分かる
粗利を稼げていないということは、その商品が原価以上の価値(=付加価値)を保有してないということです。また他社の類似製品の粗利と比較することで、競争性を判断することもできるのが粗利です。
業種によって原価が異なる
粗利は、売上から売上原価を引いたものです。この際、売上原価を差すものが業種によって異なる点に注意です。
例えば人件費は…
- 販売業・販売部門:「労務費」となり、製造原価に含まれる。
- 営業部門・管理部門:「販売費及び一般管理費」となり、売上原価には含まれない。
※販売費及び一般管理費は「営業利益」を求める際に差し引きます。
業種ごとの原価の内訳を見てみましょう。
業種 | 売上原価 |
---|---|
サービス業 | 旅費交通費・役務提供者への給与 |
製造業 | 生産費・人件費・材料の仕入原価 |
小売業 | 商品の仕入原価 |
飲食業 | 食材費 |
※事業によって売上原価の内訳が異なります。自分の事業の原価が何を差すのか確認しましょう。
粗利・粗利率・販売価格の計算方法
ここでは粗利・粗利率・販売価格の計算方法を解説します。
・粗利率 = 粗利 ÷ 売上高 × 100(%)
・販売価格 = 売上原価 ÷ (100% – 値入率)
粗利の計算方法
粗利とは「売上」から「売上原価 or 製造原価」を引いた後に残る利益です。
粗利の計算例
ここで1題、粗利の計算例を紹介します。
(例題)以下の場合における粗利を求めよ。
・仕入価格:300円
・販売個数:1,000個
この際の売上高及び売上原価は以下の通りです。
・売上原価=仕入価格×販売個数=300×1,000=300,000円
よって粗利はこのようになります。

粗利率の計算方法
「粗利率」とは売上に対する粗利の割合です。
・宿泊業・・・65%前後
・小売業・・・30%前後
・卸売業・・・15%弱
・製造業・・・20%弱
・建設業・・・10%強
販売価格の計算方法
「原価500円の商品に粗利率30%を乗せて販売価格を決めたい」という考え方で商品の値段を決めることもあるでしょう。
その際には以下の計算式で求めることができます。
粗利・粗利率計算ツール
粗利を上げる方法
粗利(率)を上げることは、事業の利益(率)を上げることに直結します。そこで、ここでは粗利を上げる方法を3つ紹介します。
単価を上げる
1つ目は、単価を上げることです。しかし、単価を上げると顧客離れに繋がる可能性もあります。価格を上げる理由、上げてもその商品を購入するメリットを理解してもらう必要があります。
売上原価を下げる
2つ目は、売上原価(製造原価)を下げるということです。今より安価で取引できる仕入先の検討や仕入価格の交渉などで可能になります。
販売数を増やす
3つ目は、販売数を増やすことです。商品1つあたりの粗利が小さくとも、大量に販売できれば自ずと粗利は増えます。一方で販売数が増えるほど経費がかかることも忘れてはいけません。
粗利・売上総利益から分析できること
粗利の計算方法が判っても、その活用方法を知らなければあまり意味がないです。
ここでは、求めた粗利から事業のどんなことが分析できるのか、どう活用したらいいのかを説明します。
売上原価の妥当性
粗利は売上高から原価を差し引いて求めます。
そのため、原価が高いと粗利は低くなります。粗利が低すぎるのであれば、仕入れ価格などの原価が販売価格に対して高すぎると考えられます。
このように原価が妥当かどうかを判断できるのが粗利です。
商品の付加価値
粗利が高い場合は、商品に高い付加価値があると考えられます。市場が認めた価値が高いために、原価に対して販売価格が高くても売れているのです。
戦略の正当性
市場の成長期を逃せば、商品は高い値段で売れません。粗利が高いということは、市場参入も含めた戦略の正しさを確かめることにもつながります。
営業利益と比較して無駄な経費を見つける
粗利と営業利益を比較し、営業利益の方が低いとします。これは、販売費・一般管理費がかかりすぎていることを意味します。無駄な経費を削減すれば営業利益が大きくなります。
同業他社との比較
他社の類似商品の粗利と比較することで、自社商品の競合性を客観的に分析できます。
粗利とは?まとめ
「粗利」を正しく理解することによって、事業の意思決定や分析に大いに役立ちます。
売上高だけでは把握できなかった、販売価格や仕入価格の妥当性や、商品ごとの会社への貢献度が確認できるのです。
当記事では、粗利の概要や計算方法及び活用方法などを解説しました。また、粗利と混合しやすい語の解説も行ったため、今後の経営に活かしてください。
事業の経営分析を行う場合、損益計算書に出てくる営業利益や経常利益などの4つの利益がありす。
例えば、損益計算書上では「売上総利益」で統一されています。「粗利」や「粗利額」という言葉は出てきません。
しかし粗利が分かれば経営分析も可能です。売上高だけでは把握できなかった、販売価格や仕入価格の妥当性や、商品ごとの会社への貢献度が確認できるのです。経営者同士の会話や、現場上で使われる「粗利」を理解して今後の経営に活かしましょう。
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