限界利益とは?計算方法や損益分岐点との関係との違いを行政書士監修で解説

限界利益は売上高よりも事業が利益を出しているかを適切に判断する指標だということをご存知ですか?なぜなら、限界利益の計算によって「売上高から費用を差し引いた後に手に入る利益」が分かるからです。

「難しい言葉だし、似たような言葉も沢山あってよく分からない」と考える人もいますが、安心してください。

本記事では、限界利益の意味や求め方、事業経営に活用する方法などとともに、「粗利」や「営業利益」など混合しやすい言葉との違いをお伝えします。

この記事の監修者
立花 信一
行政書士立花信一事務所代表
大手電機メーカーの知財部門で特許権利化、契約書作成などの仕事に従事。現在は、契約書作成、補助金申請代行、産業廃棄物許可などの許認可申請代行、遺言書作成、相続業務などを取り扱っています。

限界利益とは?

限界利益とは、売上高から費用を差し引いた後の利益です。

事業を行う際は、売上高がそのまま最終的な利益とはなりません。売上が発生して、仕入や家賃などの「費用」を差し引いたものが最終的な利益となります。

つまり、事業を行う中で大切なことは、単純な売上高よりも「売上高から費用を差し引いた後の利益」です。

限界利益のわかりやすい例

以下の例で限界利益は簡単に理解できます。

「300円で仕入れた商品を1,000円で売る。」
「その結果、700円の利益が発生した。」

しかし、この700円が全て会社に残るわけではありません。何故ならこの中から、家賃や従業員の給料などの「変動費」を支払うためです。

限界利益を簡単に説明すると、この例における「700円」のことです。

限界利益とは

売上高から直接的な費用(変動費)を差し引いたものが「限界利益」と言います。

そして、この「限界利益」から家賃などの、売上に直接関係しない費用(固定費)を差し引いて最終的な利益となるのです。

限界利益の計算式

限界利益の計算式は以下の通りです。

限界利益 = 売上高 - 変動費

上記の例では以下のようになります。

  • 限界利益=700円
  • 売上高=1,000円
  • 変動費=300円

また、先ほどから「変動費」「固定費」という言葉が出ています。実は、一般的に「費用」と呼ばれているものは「変動費」と「固定費」に分けることができるのです。

限界利益の理解にはこれらの理解は必須となるため、以下で詳しく解説します。

変動費の意味とは

「変動費」とは生産量や販売量が増加するほど、それに比例するように増加する費用です。

例として、材料費や外注費などが挙げられます。これらは、生産や販売を一切行わなければ発生しません。また、生産や販売をすれば、一定の割合で増加していきます。

この「一定の割合」つまり、売上高に占める変動費の割合を「変動費率」と言います。

変動比率は以下のように求めることが可能です。

変動費率=変動費÷売上高

例として「売上高=100万円」「変動費=25万円」とします。

この時の変動費率は以下の通りです。

25万円÷100万円=0.25(25%)

変動費率は低ければ低いほど利益になる部分が大きいです。一方で、変動費率が高ければ、多くの売上高を挙げたとしても、大きな利益には繋がりません。

固定費の意味とは

「固定費」とは、生産量や販売量に影響されない、事業を継続するために必要な費用です。

例として、家賃や給与などが挙げられます。これらは、生産や販売を行わずとも、事業を維持するためには必要な費用です。

また、固定費を詳しく分けると「間接固定費」と「直接固定費」となります。

直接固定費とは、その商品、その事業だけに直接必要な固定費です。例えば、その商品における広告宣伝費などが挙げられます。

一方で間接固定費とは、特定の商品や事業に関わらず、全体として必要な費用のことです。家賃等が挙げられます。

限界利益の計算例

費用の概念の説明を終えたので、計算例を一問紹介します。

以下の場合の限界利益を求めよ
  • 売上高=100万円
  • 変動費率=0.25

この時 変動費=100万円×0.25=25万円 となります。(変動費率=変動費÷売上高)

また、限界利益の求め方は「売上高-変動費」です。

そのため「100万円ー25万円=75万円」となり、限界利益は「75万円」となります。

「限界利益」と混合しやすい語句の違いを解説

限界利益は売上高から変動費を差し引いたものですが、非常に似ている意味を持つ語句がいくつかあります。

ここでは限界利益と混合しやすい語句の違いを解説します。

限界利益と「粗利(売上総利益)」の違いとは

限界利益とは 粗利 売上総利益

限界利益と似た意味の言葉に「粗利(売上総利益)」があります。

粗利(売上総利益)の求め方は、以下の通りです。

粗利(売上総利益) = 売上高 - 売上原価(製造原価)

限界利益との相違点は「売上原価(製造原価)」か「変動費」かとなります。

「売上原価(製造原価)」と「変動費」は同じ概念と思われがちですが、半分は正解で半分は不正解です。

なぜなら、売上原価(製造原価)の定義が業種によって異なるためです。

例えば、製造業の場合、変動費である材料費や外注費の他にも、自社の人件費や工業経費も製造原価となります。

通常、人件費等は変動費に含まれません。そのため、このケースでは粗利(売上総利益)と限界利益が異なるのです。

一方、卸売業の場合、仕入れにかかった費用(売上原価)がそのまま変動費になります。

そのため、限界利益と粗利(売上総利益)が一致します。業種によっては、これらが同じ意味になる時もあるのです。

限界利益と「営業利益」の違いとは

営業利益 限界利益とは

「営業利益」を簡単に説明すると「主たる事業で稼いだ利益」です。

以下のように求めます。

営業利益 = 売上高 - (変動費+固定費)

変動費とは商品の販売や製造に直接関係する費用です。一方で、固定費とは会社の管理活動に係る費用を言います。

つまり限界利益とは異なり、営業利益には家賃や人件費などの固定費も含まれているということです。

限界利益が分かれば営業利益が赤字でも撤退・継続の判断が可能

営業利益は、売上高から事業の費用として変動費と固定費を引いたものです。

かかる費用の大方を差し引くことになるため、営業利益が赤字の場合には「事業撤退」を視野に入れる人も少なくないでしょう。

しかし、営業利益が赤字で限界利益が黒字の場合は撤退するのはもったいない可能性があります。

なぜなら…

  • 事業の収益性は低くないから
  • 限界利益では引いていない固定費が大きすぎるだけかもしれないから

です。

営業利益しか理解していなければ、事業に価値に気付けずに撤退してしまうリスクすらあります。

固定費を削減したり、事業の売上高を高める工夫をすれば、営業利益を黒字化できるかもしれません。

この点を念頭に置き、限界利益と営業利益を見比べる習慣をつけましょう。

限界利益率とは?

限界利益率

「限界利益率」とは売上高に対する限界利益の割合です。売上が増加した際に、どれだけ限界利益が増加するかが分かります。限界利益は高ければ高いほど良い値です。

反対に、低すぎると固定費に充てることができる額が減少し、結果として赤字となりやすくなってしまいます。

限界利益率の目安とは

限界利益率の目安は事業によって異なる部分がありますが、共通して25%以上を維持することが大切です。

もちろん、25%未満であっても固定費が極端に発生しない場合等は黒字経営が可能です。しかし通常の場合、25%を下回ると損失が発生するリスクが増えてしまいます。

また、高いほど良いとされる値のため、限界利益率の改善は常に頭に入れておくべきです。

限界利益率の求め方は?計算方法を解説

限界利益率は以下のようにして求めることができます。

限界利益率=限界利益÷売上高

例として以下のような場合の限界利益率を求めます。

  • 売上高=100万円
  • 変動費=25万円

最初に限界利益を求める必要があります。

限界利益 = 100万円 - 25万円 = 75万円

その後「限界利益÷売上高」に当てはめます。

限界利益率 = 75万円 ÷ 100万円 = 0.75(75%)

となります。

更に、限界利益率は変動費率との和が1になるという特徴があります。

限界利益率 + 変動費率 = 1

つまり、変動費率が分かれば限界利益率が分かるということです。

限界利益率の活用方法とは

限界利益率は、経営状態の判断や、意思決定の材料となります。

例を挙げると以下のようなものがあります。

  • 変動費を計算して予算を立てる
  • 事業を継続するか撤退するか判断する
  • 適切な販売価格を判断する

それぞれ説明します。

限界利益率の活用1:変動費を計算して予算を立てる

目標売上高と限界利益率、固定費さえ設定できれば、変動費を計算することが可能です。

変動費を予測することで、正確な予算を立てることができるようになります。

例えば、以下の条件で計算してみましょう。

目標売上高:300万円
限界利益率:20%

この場合、以下の計算式になります。

限界利益 = 300万円 × 20%
限界利益 = 60万円

限界利益は売上高から変動費を引いたものだということを考えると…

変動費 = 300万円 – 60万円
変動費 = 240万円

上記の式が成り立ちました。

こうすれば、その年の該当事業における変動費が分かり、予算が立てやすくなるわけです。

限界利益率の活用2:事業を継続するか撤退するか判断する

限界利益を理解すれば、事業を継続するか撤退するか正しく判断できるようになります。

多くの経営者は営業利益が黒字か赤字かで判断するようですが、営業利益は変動費と固定費が引かれた指標であり、固定費の削減で改善できる可能性があります。

また、事業によっては「営業利益は赤字・限界利益は黒字」というパターンもあります。

営業利益が赤字でも限界利益が黒字なら、固定費を削減することで事業継続の可能性はあります。

一方で、営業利益も限界利益も赤字の場合には撤退の判断が適切です。限界利益が赤字の場合、売れば売るほど変動費が膨らみ赤字額が膨らみます。

営業利益と限界利益という2つの指標を比較し、正しい経営判断ができるようになりましょう。

限界利益率の活用3:適切な販売価格を判断する

限界利益率が理解できていれば、価格決定も難しくありません。

プライシングが苦手な方の多くはやたらと安価に売りがちですが、限界利益率が25%になる価格帯こそが適正であると言えるのです。

以下の例を考えてみましょう。

あなたはスマホケースを販売する際の価格決定に悩んでいます。

そこで、以下の2案を出しました。

A案:売上高2,000円・変動費1,400円・限界利益600円
B案:売上高1,600円・変動費1,400円・限界利益200円

「安価な方が売れるから」と安易に判断する前に、限界利益率を計算してみましょう。

A案の限界利益率:30%
B案の限界利益率:12.5%

先ほど紹介した通り、限界利益率の目安は25%です。

これを見ると、B案はあまりにも限界利益・売上高ともに低いことが分かるでしょう。

価格決定に迷ったときには、業界で収益を出している企業の一商品の限界利益率を調べ、自身が用意できるリソースの変動費を勘案し、そこに近づけていけるようにしましょう。

限界利益率を上げるためするべきこととは

限界利益率を上げる方法は以下の2通りあります。

  • 変動費を下げる
  • 単価を上げる

しかし単価を上げる場合は顧客が離れるリスクがあることを理解しましょう。相手方を納得させて、単価が上がっても取引を継続できるかが重要です。

より現実的な方法は、変動費を下げるという手段です。仕入先の変更や外注先の見直しなど、様々な方面からアプローチができます。

変動損益計算書とは?

限界利益を最大限活用するためにも「変動損益計算書」の理解は重要です。

まず、通常の「損益計算書」とは、会社の利益を把握できる決算書のことです。

収益、費用及び利益の把握が可能で「売上はいくらか」「費用は何にいくら使ったか」「いくら利益が出たのか」などを確認できます。

その損益計算書の費用部分を「変動費」と「固定費」に分けて表示したものが「変動損益計算書」です。(通常の損益計算書では、変動費と固定費の区分はされていません。)

変動損益計算書では、売上、変動費、固定費が明確のため「利益を上げるにはどこに手を付けるべきか」を分析しやすいというメリットがあります。

損益分岐点とは?

「損益分岐点」とは総費用と売上高が一致している点のことです。損益分岐点より売上高があれば利益、無ければ損失となります。

損益分岐点と限界利益(率)は大きく関係しているため、ここで解説を行います。

下記の図では、費用と売上高が交わっている点が損益分岐点です。

損益分岐点

また、損益分岐点の売上高を「損益分岐点売上高」と言います。

損益分岐点売上高の求め方は?計算方法を解説

損益分岐点売上高の求め方は以下の通りです。

損益分岐点売上高=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}

上述の通り「変動費÷売上高」は変動費率を表します。つまり

損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)

と言い換えることができます。

更に解説した通り、変動費率+限界利益率=1です。つまり「1ー(変動費÷売上高)」は限界利益率なのです。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

例題として、以下の場合の損益分岐点売上高を求めます。

  • 売上高=100,000千円
  • 変動費=40,000千円
  • 固定費=18,000千円

この場合、以下の計算式となります。

  • 変動費率=40,000千円÷100,000千円=0.4(40%)
  • 限界利益率=1ー0.4=0.6(60%)
  • 損益分岐点売上高=18,000千円÷0.6=30,000千円

この場合、30,000千円が損益分岐点となります。つまり、70,000千円の利益が出ている事業ということです。

損益分岐点の活用方法とは

損益分岐点は事業の分析や経営の判断として大変有効です。

例えば、変動比率と固定費が分かれば「商品を何個売れば黒字になるか」が判断できます。

また、損益分岐点は低いほどリスクが小さいです。一方で高ければ高いほど、売上を達成できなかった際の損失は大きくなります。

損益分岐点を用いると事業のリスクも的確に把握できるのです。

他にも、損益分岐点を発展させると「目標の利益を達成するには、いくらの売上が必要であるか」も判断可能です。

求め方は、損益分岐点の「固定費」に「目標利益」を加えます。

(固定費+目標利益)÷限界利益率

これを「目標利益達成売上高」と言います。

貢献利益とは

貢献利益 限界利益とは

「貢献利益」とは、売上高から変動費と直接固定費を引いたものです。

限界利益は売上高から変動費を抜いたものですから、「限界利益-直接固定費」という考え方もできます。

直接的な固定費も差し引いているため「その商品単体で見た時にどれだけ会社に貢献しているか」が分かります。

以下の方法で求めることが可能です。

貢献利益 = 売上高 - 変動費 - 直接固定費
OR
貢献利益 = 限界利益 - 直接固定費

なお、直接固定費とは「該当事業だけに必要な固定費」を指します。

その逆に「該当事業に関係なく、会社として必要な固定費」を間接固定費と呼びます。

それぞれの商品(分野)を、継続するべきか否かを分析する際などに大変有効です。

まとめ

「限界利益」は事業の分析や意思決定に大きく役立ちます。

また、限界利益を正しく理解すると「営業利益」や「貢献利益」等の混合しやすい語句や「損益分岐点」等の一見難しい概念の理解も進みます。

限界利益の概念自体は「売上高」「変動費」「固定費」の意味さえ正しく理解すればすぐに覚えられるため、是非有効に活用してください。

行政書士立花信一事務所 代表 立花信一さんからのコメント
限界利益は売上高よりも事業が利益を出しているかを適切に判断する指標です。しかし「難しい言葉だし、似たような言葉も沢山あってよく分からない」と考える人もいます。
限界利益の意味や求め方、事業経営に活用する方法などとともに、「粗利」や「営業利益」など混合しやすい言葉との違いを理解しましょう。
「限界利益」は事業の分析や意思決定に大きく役立つ「ツール」です。限界利益を正しく理解して事業経営に活かしていくことが重要です。限界利益の概念を有効に活用していきましょう。

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